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バリュー投資戦略:「Value」な銘柄を「UnderValued」な価格で掴むための4ステップ

バリュー投資における「価値(Value)」と「割安さ(Under)」を両立させるための4ステップを整理します。

はじめに

バリュー投資においては、割安と価値を区別して考える ことが重要です。

AIで財務分析を自動化する『FinDocGen』プロジェクトを始めるにあたり、まずは 「価値(Value)がある銘柄を、割安(UnderValued)な価格で掴む」 ための基本的な考え方を整理します。


Step 1:統計的フィルタリング(Underの特定)

まずは全銘柄から、市場平均や過去の推移に対して価格が低いものを抽出します。

  • 使う指標: PBR、PER、配当利回り
  • 使う項目: [日足] 株価、[BS] 純資産、[PL] 当期純利益
  • 目的: 効率的な絞り込み。数千銘柄から詳細分析に進む「候補」を見つけます。

このステップで「PBR/PERが低く、配当利回りが高い」銘柄を抽出することの意味を、あらためて「Under(割安)」の観点で整理します。

Step 1で抽出する銘柄のイメージ

  • 低PBR(株価純資産倍率): 企業の持っている「資産」に対して、株価が割安。
    • 状態: 「会社を今すぐ畳んで資産を分け合っても、今の株価より多いお金が戻ってくるかもしれない」という、資産面での割安感。
  • 低PER(株価収益率): 企業の稼ぐ「利益」に対して、株価が割安。
    • 状態: 「利益に対して株価が安いので、投資額を回収するまでの期間が短い」という、稼ぎに対する割安感。
  • 高配当利回り: 株価に対して、還元される「現金」が多い。
    • 状態: 「持っているだけで得られるリターンが大きいため、株価が下がりにくい(下値が限定的)」という、安全域としての割安感。

Step 2:クオリティと健全性の審査(Valueの裏付け)

「安いのは悪い会社だからではないか?」という疑念(バリュートラップ)を排除します。

  • 使う指標: ROE、営業CFマージン、自己資本比率
  • 使う項目: [PL] 営業利益・売上高、[CF] 営業キャッシュフロー、[BS] 自己資本・負債
  • 目的: 「稼ぐ力」と「倒産リスク」を確認し、投資に値する「Value(価値)」があるかを判定します。

Step 2で確認する「Value(価値)」の観点

  • 「効率的に稼ぐスマートな会社」(高ROE) : 単に利益が出ているだけでなく、株主から預かったお金(自己資本)をどれだけ効率よく増やしているかを見ます。
  • 「現金がしっかり残る、嘘のない会社」(高営業CFマージン) : 損益計算書(PL)上の利益は会計操作で多少作ることができますが、キャッシュフロー(CF)は誤魔化せません。
  • 「不況でもビクともしない、盾を持つ会社」(高自己資本比率) : バリュー投資において最も避けたいのは、株価が戻る前に会社が潰れることです。

Step 3:理論株価の算出(UnderValuedの測定)

このステップでは、Step 2までを通過した「質の高い企業」に対し、「将来にわたって生み出す現金」と「今持っている資産」を合算して、具体的な「1株あたりの適正価格」を算出します。

  • 使う指標: EPV(収益力価値)、DCF、ネット・ネット・バリュー、EPV
  • 使う項目: [PL] 営業利益(EBIT)、法人税等(実効税率算出用)、[CF] 減価償却費、設備投資(維持のためのCapExを推定)、[BS] 現預金、有利子負債、受取手形・売掛金、棚卸資産、[日足] 過去の株価推移と市場指数の比較(ベータ値の算出 = 割引率の決定に使用)
  • 目的: 「算出された適正価格(価値)」と「現在の市場価格(株価)」を比較し、その乖離率を算出します。

Step 3で算出する「理論株価」のイメージ

このステップを通過した銘柄は、ただ「安い」だけでなく、以下のような裏付けを持つことになります。

  • 実力値の証明(EPV分析) : 「現在の利益水準が続くだけで、株価はあと50%上がってもおかしくない」
  • 成長ポテンシャルの可視化(DCF分析) : 「今後5〜10年のキャッシュフロー成長を織り込めば、さらなる上値(適正株価の2倍など)が期待できる」
  • 下値の保証(ネット・ネット分析) : 「最悪、事業が止まっても、手持ちの現金と資産を分ければ今の株価分は回収できる」
  • 合理的な投資 : 「成長期待という『夢』にお金を払うのではなく、現時点での『事実』に対して割安な価格で投資している」

整理すると、以下の3つの視点で「理論株価」を捉えます。

  • 下限(Floor): ネット・ネット・バリュー(資産価値)
  • 基準(Baseline): EPV(現在の稼ぐ力)
  • 上限(Ceiling): DCF(将来の成長込み)

割安化率の算出は以下の候補があります。

  • MOS(Margin of Safety): (理論株価 - 現在株価) / 理論株価
  • V/P(Value to Price ratio): 理論株価 / 現在株価
  • EPV倍率: 理論株価(EPV) / 現在株価

Step 4:需給とタイミングの確認(市場の気づきを待つ)

価値が認められ始める「兆し」をデータから読み取ります。

  • 使う指標: 出来高の変化率、移動平均線との乖離
  • 使う項目: [日足] 出来高、終値
  • 目的: 「UnderValued」な株が「適正価格」へ向かい始めるタイミングを計ります。

ステップを入れ替えることで変わる「考え方」

ステップ1(割安さ)とステップ2(価値/質)は、入れ替えることが可能です。これにより、投資戦略のスタンスが大きく変わります。

パターンA:【割安から探す】(1 → 2 → 3)

  • 考え方: 「まずは市場で見捨てられている株(低PBR等)を探し、その中からマシなものを選び出す」
  • メリット: 圧倒的なバーゲン品を見つけやすい。ベンジャミン・グレアム流の伝統的なバリュー投資。
  • リスク: 質の低い銘柄が混ざりやすく、分析に時間がかかる。

パターンB:【クオリティから探す】(2 → 1 → 3)

  • 考え方: 「まずは素晴らしいビジネス(高ROE等)をリストアップし、それが不当に安くなった瞬間(UnderValued)を狙う」
  • メリット: 失敗が少なく、長期的には高いリターンが期待できる。ウォーレン・バフェット流の「素晴らしい企業を適正な価格で買う」アプローチ。
  • リスク: 良い会社はなかなか安くならないため、投資機会が少なくなる。

おわりに

本記事では、バリュー投資における「価値(Value)」と「割安さ(Under)」を両立させるための4ステップを整理しました。これらのステップを通じて、投資家はより合理的かつ効果的な投資判断を下すことができるでしょう。

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